記憶のための未来〜東日本大震災後のアートと暮らし〜展に行ってみた

こんにちは、さずです。

先日UBCにある美術館Museum Of Anthoropology at UBC(略してMOA)に初めて行って来ました。

というのも、自分のお客さんから”東日本大震災の写真展”が9月5日まで催されているとの情報をゲットしたからです。

その名もA Future For Memory/記憶のための未来

東日本大震災が起きた時私はカナダにいました。カナダに来て一年も経たない時にあの地震が起こりました。

仙台出身の私は、自分の地元に地震が多いことは周知の事実だったし、実際そのニュースを聞いた時も「またいつもの地震だ」ぐらいにしか思いませんでした。

しかしその思いは津波がさらうかのように一瞬にして奪いさられ、この地震が”いつもの地震”ではないことがすぐに分かりました。

そこからは地元にいる友達からの絶え間ないメッセージによって情報が分刻みでアップデートされ、その凄まじい光景と次々に起こる信じられない事態に、あまりのショックでその後の記憶が私の脳から一部なくなっています。

私は”仙台市”出身なので、生まれ育った場所が津波で流されたわけではなかったのですが、それでも自分の高校の近くや仙台空港など、見慣れた場所が津波に襲われていたり、がれきに埋もれている光景を遠く離れたカナダのテレビで見るのは精神的にかなり辛いものがありました。

これが自分の”家”であったり、家族、親戚、近しい人で直接被害を受けた人たちのことを思うと、自然災害とはいえ本当にやりきれない思いになりました。

地震から2年後に一時帰国したタイミングで両親が津波の被害を甚大に受けた海沿いの場所に私を連れて行ってくれたことがあったのですが、ショックで何一つ言葉が出ませんでした。

元々小さな集落だった住宅地は建物が一切なくなっており、残っていたのは津波に襲われた後そのまま放置され錆びたブルドーザーと屋根がなくなったガソリンスタンドでした。

海岸に行ってみれば元々木で生い茂っていた場所もその木々はほとんど津波で奪い去られ、残っていた数少ない木々は2年が経過した後でも全て津波が襲って来た方向に傾いていました。

海岸には誰一人おらず、私たち家族3人だけが静かに波打つ海を眺めていて、「ここを津波が襲って全部奪って行ったんだ・・」と思い涙が止まらなかったのを覚えています。

あの震災から10年が経ちますが、まさかカナダの地で東日本大震災の写真展が開かれるなんて夢にも思っていなかったので、その情報を聞いた瞬間に使命感に駆られ、その日の夜のうちにオンラインでチケットを予約し数日後に訪問しました。

今回はその展示会の様子についてリポートしてみたいと思います。

と言っても展示品の写真を全て撮って来たわけでもないので、気になる方は足を運んで自分の目で見てみてくださいね。

まずはMOAに入るところから。

MOAは主にファーストネーションのアート作品を展示している美術館なので、館内に入るやいなやファーストネーション特有の作品たちがお目見えします。

この通りを抜けて右に曲がるとExibitionの部屋があり、そちらで今回の目的の展覧会が催されています。

ありました。

こちらに記されている内容としては

”東日本大震災から10周年を迎える2021年に開催されるこの展覧会は、物質的な環境が劇的に変わってしまった時、記憶とどう向き合っていくのかをテーマとしている。震災後の人々の心象風景もふくめた移りゆく風景に視点を置いている。また、この震災は単に東北と呼ばれる地域だけの話ではなく、世界につながることだと提起している。”

だそうです。

中に入ると津波と第一原発からの放射能で全て洗い流されて何もなくなった地にポツンと咲く花の写真や、ボコボコに凹んで錆びた軽自動車の中から力強く咲く美しい花々の写真が出迎えてくれました。

モノクロで空虚な空間にピンクやオレンジの鮮やかな花が咲いている様子に、植物が生えるほど津波が発生してから長い年月が経っても何も手付かずなのだということと同時に、こんな状況の中でも生きていこうとする生命の力強さを感じ、この写真を見た瞬間に熱いものを感じて涙が出そうになりました。

しかし実はこの花は自然に自生したものではなく、片桐さんというアーティストが震災後福島の南相馬に移り住み、花を植えて写真を撮影したもの、ということを知り、涙が引っ込みました笑。

いや、とてもとても心動かされる作品なのは変わりありませんが。本当にキレイな写真たちでした。

詳しく知りたい方はこちらのビデオでどうぞ。

ビデオの5.00秒ぐらいからこの片桐さんの作品についての解説が始まります。

片桐さんの作品を見終えるとビデオ作品のブースが現れます。

5つのモニターがあり、それぞれ違う映像が流れています。

地震と津波発生直後の街の様子の映像や、住民の方々へのインタビューなどが主な内容でした。

地震発生から数日後の様子を改めて映像で見ると、それはまるで漫画か映画かと思うほど非現実的で、にわかには信じがたい光景でした。いかに巨大地震だったかが思い知らされます。

これらの映像のうちの一つに、津波で流された写真たちをキレイに洗浄して乾かし、持ち主に返す、というプロジェクトをしている方々の作業中の映像がありました。

壁に展示されていた大量の写真は津波で被害を受けた各家庭の写真たちですが、ここに展示されているものは全て修復不可能になったのだと思われるもの。色が一部白く抜けていたり、損傷が激しく写真としてはあまり機能しないものです。

このExibition会場自体あまり広くないのですが、奥に進んでいくと細い路地のような展示スペースがあり、そこには津波直後のものだと思われる写真が展示されていました。

この写真たちは気仙沼にあるリアス・アーク美術館で展示されている写真の一部を借りて来ているそうです。バンクーバーにいながらして見れるのは貴重。

どの写真を見ても心が締め付けられるような思いになり、涙が溢れました。

自分はこの地震を経験していないにもかかわらず、当時のことを思い出したり、ここで生活していた人たちのことを考えると本当にいたたまれません。

去年一時帰国した時に津波で大きな被害を受けた石巻の海沿いに行く機会があり、津波で全てがさらわれた道路や防波堤も新しく工事・新設している真っ最中でした。

震災から10年近く経った時点でも未だに元の状態に戻っていないところがたくさんある、という事実を目の当たりにして心が痛んだことを思い出しました。

このマップは場所ごとの津波の高さと、体感震度を表したもの。

震源地は宮城県沖の地震だったのですが、岩手県の宮古は他のどこよりも高い40.4mの津波が。

体感震度も意外にも茨城県と福島の第一原発の辺りが一番強かったみたいです。

展示スペースには他にも福島第一原発の事故後の放射能を浴びた木の年輪を調べたものがありました。

私が訪れた時は他に訪問客がほとんどおらず、かなりのんびり、じっくり見ることができました。

所狭しと様々な内容の展示品があり、日本人はもちろん海外の方にも分かりやすく展示されているな、と感じました。

大体1時間ほどで全て見終わり、展示室から出てくるとそこにはMOAで一番有名なRaven and First Menが。

写真に撮っても美しい彫刻。

この作品見たさに遠くからわざわざ足を運ぶ人もいるそうな。

現在MOAは予約制なので事前にウェブサイトで日時指定のチケットを購入する必要があります。

開館時間は10時~17時(月曜休館)。入館料は一般=$15、シニア(65歳以上)・学生=$13

A Further for Memory/記憶のための未来 は9月5日まで開催しています。

気になる方はぜひ足を運んで見てください!

それではまた〜

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